ニッポン・スヰングタイム

著作やCD制作、イベントの活動を告知します。戦前・戦中ジャズをメインとして、日本の洋楽史について綴ります。

2006-01-01から1年間の記事一覧

LEO SIROTA

レオ・シロタ Leo Sirota(1885-1965)に就いては、山本尚志氏の充実した評伝も出版されており、また復刻CDも多彩に出されているので、今さら愚生如きが評するまでもないであろう。戦前は旧時代的なヴィルトゥオーゾと評し去られる傾きのあったこの知的で気品…

カフヱータイガー女給

顔面がアレルギーで腫れて一ヶ月ほど休んでいました。お酒もしばらく断っていたのですが、もう大丈夫です。 さて、その間にも買うものは買っていて、嬉しかったのはこの一枚。 「君恋し」 カフェー・タイガー よう子・すみ子 「銀座行進曲」 同 昭和4年当時…

溝淵浩五郎の独奏

ギターが日本に入ってきたのは明治時代のことである。沢山の声楽家を育てたアドルフォ・サルコリがその普及につとめた。昭和4年に名ギタリスト、アンドレス・セゴヴィアが来日したことが大きな刺激となって、ギターを弾く人やギターのための作曲をする作曲…

溝淵浩五郎の独奏

ギターが日本に入ってきたのは明治時代のことである。沢山の声楽家を育てたアドルフォ・サルコリがその普及につとめた。昭和4年に名ギタリスト、アンドレス・セゴヴィアが来日したことが大きな刺激となって、ギターを弾く人やギターのための作曲をする作曲…

これぞマドロスの恋

1931年(昭和6年)のドイツ、ウーファ映画「狂乱のモンテ・カルロ」"Bomben auf Monte Carlo"主題歌「これぞマドロスの恋」「モンテカルロの一夜」は、我が国では奥田良三のポリドール盤と山田道夫のパーロホン盤でレコード化された。特に奥田良三がベル…

伯林春秋

「伯林春秋」という謎のレコードがあって、これはオークションに出たものだが、男声独唱の歌曲らしきものが吹き込まれているというので落とした。此処をご覧の諸兄はご存知の通り筆者は貴志康一に関係するものを蒐めているので、もしや此の盤も貴志関係であ…

Kurt Weill

先に「三文オペラ」の日本語バージョンを紹介したので、序でに手元にあるクルト・ヴァイルの僅少なコレクションから何枚かを挙げてみる。 一枚目は、先日紹介した記事の下方に示した初演者陣によるUltraphon録音(=Telefunken再発盤)より一年前の1929年にリ…

Arthur Nikisch

1913年録音のニキシュのベートーヴェン「第五」は流石に音の曖昧さ加減に辟易するが、1920年代になってから、アコースティック時代後期のオーケストラ録音は(好き嫌いはあるだろうが)充分に指揮者とオーケストラの呼吸を聴き取ることができる。 この「ロー…

La Folia

コレルリの「ラ・フォリア」"La Folia"といえば、ジョルジュ・エネスコの神品的なレコード"Folies D'espagne"と、エネスコに薫陶を受けたユーディ・メニューインの若々しい伸びやかな演奏のレコードを想起させるが、1938年に日本でこの曲の重要なレコードが…

三文オペラ

ベルト・ブレヒト脚本、クルト・ヴァイル作曲のジャズオペレッタ「三文オペラ」"Die Dreigroschenoper"(1928)は、初演までに重なった幾つものアクシデントやトラブルが災いして幕が開く直前まで「三日と持たないだろう」と下馬評で囁かれ、いざベルリン初演…

マドレーヌ藤田

マドレーヌ藤田(1910〜1936)は、エコール・ド・パリの時代にモンマルトルで輝いた画家、藤田嗣治の四番目の妻である。 そもそも藤田はパリ留学をする以前に最初の結婚をしていたのだが、パリで二番目の夫人バレヱと一緒になり、あっという間に破局すると、次…

唄へ唄へ

サンフランシスコ出身の日系二世歌手宮川はるみ(1914〜??)の最高傑作のひとつが、1937年に日本コロムビアに録音されたLouis Primaの"Sing Sing Sing"(唄へ唄へ)である。ステージで好評だったこのナンバーは宮川自身の希望でコロムビア文芸部の反対を押し切…

Dancing Dixieland-Style

服部良一は昭和初期からルンバやスイングジャズなど時代の尖端をいく編曲を研究し、戦前にいち早くブギを取り入れたジャズアレンジを行なっていた。もっとも「別れのブルース」「雨のブルース」など一連のブルース物のヒットで、戦前は「日本のブルース王」…

Franz von Vecsey

フランツ・フォン・ヴェチェーFranz von Vecsey(1893-1935)の名を知ったのは、ご多分に漏れず中村稔氏の「ヴァイオリニストの系譜」(音楽之友社)によってであった。氏の的を得た、確信に満ちた簡潔な文章で、僕は実際に聴いていないときからヴェチェーのフ…

潜航艇の唄

黒田進というよりは楠木繁夫としてよく知られている歌手の、初期のレコードである。 黒田は1928年に東京音楽学校を退学。以降、c.1933年に東京に活動の軸足を移すまでは関西で独唱コンサート、声楽教授、レコード録音を行なっていた。(c.1929年から名古屋の…

意想曲一九三六年

「意想曲一九三六年」服部良一 作曲・指揮 クリスタル交響楽団 1935年7月新譜。 日本のガーシュインを志ざした服部良一がシンフォニック・ジャズの手法を駆使した意欲作。「来年の日本と世界の姿を交響曲にまとめてレコードの表裏に吹き込んだ大作」と自伝「…

Symphonie-Serie

1920年代にDeutsche Grammophonが行なった交響曲全曲録音シリーズは、伝記録音法の到来とともに過去物として押し流されたが、いま改めて耳を通すと、この時代のオケの練達した技術、熱く受け継がれてきた音楽魂に注目せざるを得ない。それは交響曲のような長…

Pathé - art

Pathé-artは1927年にフランスパテ社がリリースしはじめた、いわば音盤の芸術品である。 ラベルデザインを当時の著名な装丁家 フランソワ・ルイ・シュミーが手掛けている。シュミーの仕事のなかでもジャン・ デュナンの拵える七宝焼きとのコラボによる本の装…

鈴野雪夫と竹森しげる

先日、NHKの深夜ラジオで武井守成作曲・指揮の「祭礼の街角」(武井楽団:1941年)を放送したら、思いがけず武井氏のご遺族から感想を頂戴した。そこで武井楽団の他の録音や、伯林で録音された武井作品、ここに掲出した「竹森しげる」という名で作曲したジャ…