ニッポン・スヰングタイム

著作やCD制作、イベントの活動を告知します。戦前・戦中ジャズをメインとして、日本の洋楽史について綴ります。

日本洋楽史

久野久のレコード

今年手にしたレコードで最も嬉しかったのは久野久(久子)のフジサン盤であった。 久野久(1886-1924)は明治期のピアニストではもっとも人気を博した存在である。15歳で東京音楽学校予科に入学し、その後本科器楽部に進んで幸田延やヘルマン・ハイドリヒ、ル…

貴志康一評伝

今回は、レコードとは異なる内容です。 2006年もはやひと月足らずになりましたが、年内に貴志康一の評伝が出版されました。 http://www.kokusho.co.jp/shinkan/index.html 「貴志康一 永遠の青年音楽家」毛利眞人 四六判・上製 400頁 3000円(税別) 国書刊行…

原信子のFonotipia録音

原信子(1892-1979)は藤原義江と同様、浅草オペラから雄飛してイタリアの歌劇場に立ったソプラノである。 1913年、東京音楽学校のピアノ科を中退。その後、ハンカ・ペツォールトやアルフレド・サルコリーに師事して声楽を修めた。はじめローシーの帝劇オペラ…

東京帝大の学生カルテット

今回はニットーの茶色盤2枚である。茶色盤は特殊ラベルで、個人吹き込みに供されたカラーである。 上のはチャイコフスキーの「アンダンテ・カンタービレ」で、AB両面に亘って吹き込まれている。同曲をきちんと演奏したものでは、これが日本で最初ではない…

空中行進曲

大阪朝日新聞と東京朝日新聞で制定した航空記念の唱歌、「空中行進曲」は1929年に日蓄系のニッポノホン、コロムビア、オリエントでレコード化された。先日の音盤倶楽部でようやく三種類が揃った。 オリエント以外のレーベルは目下、田舎のコレクションに架藏…

チンコロ仔犬

目下、出版用の最終稿に手こずっているのでなかなか更新がままなりませんが、煮詰ったときに簡単ながら更新したいと思います。 このレコードは1931年2月に来日したアルト歌手、クララ・バットの日本録音です。この北原白秋作詩・山田耕筰作曲の「チンコロ仔…

辻吉之助・久子

しばらく間があきました。 仕事で多忙であったのであります。 これから更に多忙になるので、此処は随時更新ということになるのであります。 今回は辻父子のレコードを挙げてみる。先日、縁ありて織田作之助の小品「道なき道」に関連したレコードを有志に披露…

溝淵浩五郎の独奏

ギターが日本に入ってきたのは明治時代のことである。沢山の声楽家を育てたアドルフォ・サルコリがその普及につとめた。昭和4年に名ギタリスト、アンドレス・セゴヴィアが来日したことが大きな刺激となって、ギターを弾く人やギターのための作曲をする作曲…

溝淵浩五郎の独奏

ギターが日本に入ってきたのは明治時代のことである。沢山の声楽家を育てたアドルフォ・サルコリがその普及につとめた。昭和4年に名ギタリスト、アンドレス・セゴヴィアが来日したことが大きな刺激となって、ギターを弾く人やギターのための作曲をする作曲…

La Folia

コレルリの「ラ・フォリア」"La Folia"といえば、ジョルジュ・エネスコの神品的なレコード"Folies D'espagne"と、エネスコに薫陶を受けたユーディ・メニューインの若々しい伸びやかな演奏のレコードを想起させるが、1938年に日本でこの曲の重要なレコードが…

三文オペラ

ベルト・ブレヒト脚本、クルト・ヴァイル作曲のジャズオペレッタ「三文オペラ」"Die Dreigroschenoper"(1928)は、初演までに重なった幾つものアクシデントやトラブルが災いして幕が開く直前まで「三日と持たないだろう」と下馬評で囁かれ、いざベルリン初演…

意想曲一九三六年

「意想曲一九三六年」服部良一 作曲・指揮 クリスタル交響楽団 1935年7月新譜。 日本のガーシュインを志ざした服部良一がシンフォニック・ジャズの手法を駆使した意欲作。「来年の日本と世界の姿を交響曲にまとめてレコードの表裏に吹き込んだ大作」と自伝「…

鈴野雪夫と竹森しげる

先日、NHKの深夜ラジオで武井守成作曲・指揮の「祭礼の街角」(武井楽団:1941年)を放送したら、思いがけず武井氏のご遺族から感想を頂戴した。そこで武井楽団の他の録音や、伯林で録音された武井作品、ここに掲出した「竹森しげる」という名で作曲したジャ…