ニッポン・スヰングタイム

著作やCD制作、イベントの活動を告知します。戦前・戦中ジャズをメインとして、日本の洋楽史について綴ります。

空中行進曲

大阪朝日新聞と東京朝日新聞で制定した航空記念の唱歌、「空中行進曲」は1929年に日蓄系のニッポノホン、コロムビア、オリエントでレコード化された。先日の音盤倶楽部でようやく三種類が揃った。

オリエント以外のレーベルは目下、田舎のコレクションに架藏しているので、以前スキャンした汚い画像しかない。

 オリエント  1929年8月新譜  河村肇

 ニッポノホン 1929年10月新譜 曾我直子

 コロムビア  1929年10月新譜 川崎豊・曾我直子

10インチ両面にまたがる歌だが、スルヤ時代の諸井三郎の作品であるという以外、たいして面白くもない歌である。三種類とも同じアレンジのオーケストラ伴奏だが、曽我盤のみ、冒頭に飛行機のプロペラ音の擬音が入っている。

すこし驚いたのはオリエントの河村肇で、どんな人物が歌っているのであろうと思いきや、川崎豊の変名であった。同系列のレーベルなのだから変名にする必要は全くといってよいほど無いのだが、吹き込み契約か何かの事情があったのだろう。

曾我直子も川崎豊も、ともに声楽家を志していたが経済的な事情から流行歌などの吹き込みをせざるを得なかった。北原白秋作詩、諸井三郎作曲のこの歌曲など、曲りなりに正統的な声楽曲なのが救われるが、もう少しいい曲目をもっと沢山吹き込んでいて貰えたらと残念だ。