ニッポン・スヰングタイム

著作やCD制作、イベントの活動を告知します。戦前・戦中ジャズをメインとして、日本の洋楽史について綴ります。

ポリドール白盤

道頓堀行進曲とは銘打ってあるが、これは日比繁次郎作詩、塩尻精八作曲の有名なそれではない。作詩作曲未詳の異曲である。但し画像を見れば判るように曲名を鉛筆で抹消した跡がある。これは社内会議にかける為にプレスされた所謂テスト盤である。

道頓堀行進曲と謳っているものの心斎橋まで包含しており、曲調も明朗なフォックストロットであり、市販されなかったのが惜しい一曲。うれしいのは松平晃のポリドール、キング時代の吹き込みな点である。

裏面も大阪を取り扱った歌でしっとりした佳曲であるが、そちらの歌手は未だ同定確認をしていない。

「我等の大毎」と記してある。即ち大阪毎日新聞の社歌である。

こちらは社内テスト盤というよりは、関係者に頒布した、というような性格のレコードだろう。

針を落して喜んだのは、片面の歌手が奥田良三であったことである。

なお、片面は中村慶子であった。奥田の面がまっとうなオーケストラ伴奏であるのに対して、中村慶子の面はジャズバンド伴奏でたいそう賑やかである。日本ポリドール・ヤングプレイヤースあたりが伴奏をつけているのだろう。

此の顔ぶれとNナンバーのMtx.から推察されるように、恐らく1931年後半〜32年の録音ではなかろうかと考えられる。31年以前ではマトリックスナンバーが進みすぎ、31年秋から32年春までの期間を外れると奥田良三はベルリン、ナポリへ留学してしまっているからである。

いずれにせよ大阪関係のレコードとして手元にある物では、今のところ白眉といえそうである。