ニッポン・スヰングタイム

著作やCD制作、イベントの活動を告知します。戦前・戦中ジャズをメインとして、日本の洋楽史について綴ります。

CD「スウィング・パラダイス」発売のお知らせ

最近は身辺の煩雑な事情で更新を怠けて、CDのリリースに合わせて記事を書くくらいの頻度になってしまいました。僕の監修したCDやぐらもくらぶのCDが発売されるたび収録曲のデータをそっくり抜いてせっせとウェブ随筆にいそしむ(しかもCDには言及せず恰も自分で調べた情報であるかのような筆致)困った人もいる昨今、ウソが真実にならないよう心機一転してブログも頑張って継続したいと思っています。 と愚痴りながらも新しいCDがリリースされますので、ご報告がてら久しぶりのブログを。 新年2014年1月22日、ユニバーサルミュージックより幻のSP盤復刻!~ニッポン・モダンタイムス・シリーズ~スウィング・パラダイスが発売されます!! 2012年にテイチク、ビクター、コロムビア、キング各社でシリーズ化された「ニッポン・モダンタイムス」シリーズのポリドール篇で、企画構成はもちろん高橋正人さん、覆刻担当は保利透君です。 拙著「ニッポン・スウィングタイム」(講談社刊)でもポリドールのジャズについて触れておりますが、そもそもこの著作、基本的に「CD化してほしいなあ」という願望を抱いたレコードについて述べております。ですから、日本ポリドールの邦楽カタログ初期の「君が居なけりゃ」や「雨の中に唄ふ」(共にこのブログでも取り上げましたが)やポリドール・リズム・ボーイズと薄命のジャズアレンジャー・工藤進の強力タッグによるジャズコーラス作品など思い入れの強い選曲となりました。拙著では紙数の関係で削らざるを得ませんでしたが、バンジョーの長いソロを含む藤山一郎のジャズソング/映画主題歌を3曲収録できたのは個人的に嬉しい出来事です。今回が初復刻となるジョージ・アラワ(sg)、角田孝(g)の「ハワイの空へ〜フェアウェル・ブルース」はハワイアンだと思って油断していると足下を掬われるようなスリリングなセッションです。 また今回、特に収録できて意義深いと思うのは、James P. Johnson作曲のシンフォニック・ジャズ「ヤミクロー "Yamekraw"(1927)」です。和田肇のピアノ独奏、紙恭輔(指揮)コロナ・オーケストラによる録音は、日本に於けるシンフォニック・ジャズのたいへん稀少な記録となりました。和田肇は戦前から戦中、戦後にかけて数多くのレコード録音を行なっていますが、ジャズピアノの第一人者という称号とはうらはらに彼の録音群にホットなジャズは極めて少なく、このポリドールとエジソン社への僅かな録音でかろうじて彼のブルースを聴くことができるのです。同様、「ジャズのパイオニア」という伝説のみ名高い紙恭輔の真骨頂が聴けるのもこの録音をトップとして、そんなに多くはありません。 聴きどころはまだまだあるのですが、ちょこちょこと小出しにしてゆきます。 ところでその「スウィング・パラダイス」に先行して明日12月11日に、同じユニバーサルミュージックから幻のSP盤復刻! はたちのバタヤン大ヒットパレード「大利根月夜」幻のSP盤復刻! 戦前オールスター・ヒット・パレード大全集の2タイトルが発売されます。これらを年明けの「スウィング・パラダイス」と併せて聴けば、戦前戦後に日本五大レーベルの一角を成したポリドールの、ポピュラー音楽に於ける広範で多彩なカバー力に驚かれることでしょう。昭和10年代、東海林太郎や上原敏、結城道子などの歌手が歌う日本調の流行歌はポリドール・カラーとしてレコードファンに知悉されていましたが、同じようにジャズ、タンゴ、ルンバにすぐれたレコードを残したことは今回の覆刻によって再認識されることでありましょう。流行歌のポリドールは、またジャズのポリドールでもあったのです。