ニッポン・スヰングタイム

著作やCD制作、イベントの活動を告知します。戦前・戦中ジャズをメインとして、日本の洋楽史について綴ります。

ラベルで辿るヴォルフシュタール

ずっと当ブログをお留守にしてきたので、ゆるゆると再開したい。

手始めに美しいレコードラベルを少々。

以前、「ヨーゼフ・ヴォルフシュタール」で紹介したので詳しくは省く。

 アコースティック録音のベートーヴェン「ロマンス ヘ長調」。1925年録音。このディスクは日本ポリドール創設まもなく、ベートーヴェン没後百年記念(1927年)として相当数がプレスされている。

 これも1925年録音とおぼしい独ホモコードのヴォルフシュタール。ホモコードへは若干の電気録音も残しており、たとえば後に日本パーロホンでプレスされたサン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーゾ」も電気初期のホモコード録音である。

 ホモコード原盤がチェコスロヴァキアでプレスされた例。ショパンの「ノクターン 変ホ長調 Op.9-2」。これも1925年頃の録音。演奏はすばらしく陶酔的で美しい。時代がついた純粋な銀線のようなヴォルフシュタールの、渋い美音が楽しめる。なお、彼はこの同じノクターンを独アルティフォン(※)にも録音しており、そちらはのちに廉価レーベルの独Kalliope(カリオペ)でもプレスされた。

昭和10年代のアサヒレコードの"A"を基調としたラベルデザインはアルティフォンから踏襲している

 有名な1929年録音のベートーヴェン「協奏曲」。こちらも日本ポリドールのプレスが非常に流布した。あらえびすや野村光一の評価は、現在手に入りやすい文献で見る限りではそれなりだが、発売当時はヴォルフシュタールが全盛期であったこともあって、クライスラー盤と互角を張る勢いであった。

 ヴォルフシュタールが唯一遺したモーツァルトの「協奏曲 第5番 イ長調(トルコ風)K.219」。1928&29年録音。

このあと、ヴォルフシュタールは独Ultraphon(ウルトラフォン)に数枚のディスクを録音している。音のみは保存しているのだが盤は手元に無く、ラベルを紹介できないのが残念だ。ゴルトマルクの協奏曲の断章など絶品であった。