ニッポン・スヰングタイム

著作やCD制作、イベントの活動を告知します。戦前・戦中ジャズをメインとして、日本の洋楽史について綴ります。

二村定一のレコード 2

『あめやさん』 Nipponophone 15508 1925(T14) 正月新譜

1925年正月新譜ということは前年の録音ということになる。二村定一の名前が入った最初のレコードである。二村定一というタレントを佐々はお伽歌劇でフルに活かそうとした。ここではベテランのアルト歌手・天野喜久代を相手役としている。

ラベルに見られるように、二村の名前表記は二村貞一となっている。単なる表記ミスなのか意図的なものなのかは不明。なお貞一という表記は二村の本名、林貞一と同じなので、まったくの誤記とも考えられまい。

レコードの内容は、調子のよい飴やがお嬢さんを相手に芸を尽くして飴を次々に買わせ、気がついたらお嬢さんがいない。もらったお金は葉っぱになっていて狸に化かされたことを悟る、という寸劇である。

のちにビクターで平井英子と再録音している。二村が飴やに扮していい声を聞かせるというシチュエーションは「エノケンのちゃっきり金太」でも踏襲しており、またレコードでは「ポン太郎あめ」という大傑作もあるのだが、それはずっと後のお話。とにかく若い24歳の二村の歌いまわしや演技力旺盛な語りが聴きどころだ。