ニッポン・スヰングタイム

著作やCD制作、イベントの活動を告知します。戦前・戦中ジャズをメインとして、日本の洋楽史について綴ります。

ラジオ告知とCDリリースのお知らせ

 一年とちょっとぶりの毛利監修のCDリリース告知その他です。  7月5日リリースですから悠長にも程がありますが、こうしたちょっとした変化を機会にこのブログもまた活性化しなければいけないな、と思います。怠けすぎました。  さしあたり直近にラジオへの出演が2件あります。 ・7月2日(木) エフエムあまがさき PM.22:00〜 「IN THE POCKET」 6月25日の放送に引き続き、戦前に尼崎周辺で花開いたダンス文化について語っています。webでも聴くことが可能です。 http://fmaiai.com/ ・7月3日の深夜 : (4日) AM. 1:00〜 「関西発ラジオ深夜便」 これも先月に続き後編の放送です。「JOBK放送90年企画 SP盤とラジオ」と題して、ラジオとジャズの関わりをたどります。 今回は、アメリカをはじめ海外へ向けて放送され、戦時中には「対米謀略放送」として機能した短波国際放送の電波に乗ったジャズが目玉です。アメリカとの関係が悪化し、戦争前夜であった時期の対外的なジャズ録音はたいへん珍しく、70年以上を経て、今回が初の国内ラジオ放送となります。特にレイモンド・スコットのファンには驚きの音源であるかと思います。 http://www.nhk.or.jp/shinyabin/osu.html http://www.nhk.or.jp/osaka-blog/announce/218772.html  さて、CDのお知らせです。 「ミリタリズム 〜軍国ジャズの世界〜 1929-1942」  ちょっと4日(3日深夜)のラジオ放送とも関係してくるのですが、今回は『戦争とジャズ』という、水と油のような関係性の要素を組み合わせたアンソロジーです。  今年は終戦70周年を受けて「あなたは狙われている ~防諜とは~ スパイ歌謡全集」「みんな輪になれ 〜軍国音頭の世界〜」と辻田真佐憲さん監修による軍歌のCDや、佐藤利明さんの監修による「芸能宝船・歌は戦線へ ~戦争と喜劇人~」という戦争と大衆芸能を考える企画が続きましたので、これはジャズの立場からのアンサー的なアプローチともいえましょう。 企画したのは去年の5月かそこらで、たしか7月に上京した折に保利透さんに企画書を渡したのではなかったかと思います。で、制作に着手したのが今年の5月くらいからだった筈です。制作中はMilitary-Jazzを略して「ミリジャズ」というコードネームで呼んでいましたが、保利さんの提議で最終的にこのタイトルとなりました。 「ミリタリズム」とは服部良一が軍歌をメドレーのスウィングに仕立てあげた楽曲のタイトルで、時局に迎合しながらも自身のジャズ・アレンジの才能を遺憾なく発揮した作品です。今回のアンソロジーの内容が、まさに当時の服部良一の心境に合致するものとして、いわば衣鉢を継ぐ形で使わせて頂きました。 今回のアンソロジーも、私の監修した他のCDと同様、楽曲の傾向をいくつかのグループに分けて、尚且つ編年体でまとめましたが、勿論そのままお楽しみ頂けます。一度ざっと聴いてみてから改めてライナーを手にお聴き頂くと、二度か三度はおいしいアルバムになっているはずです。 ジャズをテーマとしたCDですが、その内容にはいくらかバラエティー性を持たせました。そうして、 �@軍縮時代のジャズ軍歌(Disc-01〜3) �A舶来ジャズソングも軍国仕様に (04〜10) �B銃後はジャズる (11〜14) �Cスウィングする軍歌 (15〜22) �D軍国ビッグバンド(18,19,22)  という5つのグループに分けて選曲してあります。これは1929年(昭和4)から1942年(昭和17)までほぼ年代順でもあります。収録曲の詳しい解説はライナーやツイッターでご覧ください。 先にお断りしたようにジャズとはいいつつ、ルンバや流行歌(ここでは便宜上、軍歌とひとくくりに扱いました)も収録しましたが、共通するのはスウィングです。スウィングはベニー・グッドマンなどによって1930年代半ばから唱えられたジャズの潮流ですが、スウィングは時代の感覚でもあって、同時代のラテン音楽シャンソンなどにも及ぶ世界的な共通語なのです。ジャズのナンバーとは思えない日本製の愛国流行歌やルンバも、最高にスウィングしているという理由で選曲しています。 結局のところ、戦争が始まろうがなんだろうがジャズメンはジャズメンであり続けた。そこには韜晦術や乗っかり(便乗)やレコード会社の思惑などさまざまに絡みあったことでしょうけれども、一度日本に根づいたスウィング文化はなまじのことでは消え去らなかった、という、そのあたりの空気が伝われば幸いであります。戦前・戦中のスウィングを存分にお楽しみ下さい。