ニッポン・スヰングタイム

著作やCD制作、イベントの活動を告知します。戦前・戦中ジャズをメインとして、日本の洋楽史について綴ります。

二村定一

【新譜発売のお知らせ】雨の中に歌ふ 二村定一とジャズ小唄

来週11月25日(水)、ザッツ・ニッポン・エンタテインメント・シリーズ*1の第三弾としてアルバム『雨の中に歌ふ 二村定一とジャズ小唄』がビクターエンタテインメントより発売されます! 今年は二村定一生誕120周年。その記念年に滑り込みで間に合いました。二…

二村定一のレコード 10

「浅草見物」(佐々紅華 作 並 指導) 高井ルビー 二村定一 ニッポノホン オーケストラ 1926(大正15)年2月新譜 麻生豊の漫画「ノンキナトウサン」を思わせる子供じみた父さん(=二村定一)と、しっかりした娘の春子(=高井ルビー)が連れ立って浅草を遊び歩くとい…

二村定一のレコード 9

『東京見物』Nipponophone 16157 1926(大15)年6月新譜 歌詞カードと月報では『彌次郎喜多助 東京見物』と登場人物の名が小さく入っているがラベルでは『東京見物』とのみ記されている。 お伽歌劇のレコードではすっかり常連となった佐々紅華の作並びに指導で…

二村定一のレコード 6

『エンサカホイ』『ノンキナトウサン』 Nipponophone 15735-A 1925(T14) 7月新譜 佐々紅華作詞・作曲の漫画童謡。浅草オペラの少女スター岩間百合子との共演である。『エンサカホイ』では二村は岩間百合子の歌唱の合いの手とリフレインの合唱をつとめる程度…

二村定一のレコード 5

『泊り番』 Nipponophone 15689-B 『笑ひ薬』のカップリングで、こちらも浅草オペラの少女スター相良愛子が共演している。もっとも『笑ひ薬』ではリフレインに共唱でつきあっている程度だが、この『泊り番』ではがっつり相手役として共演している。 内容は、…

二村定一のレコード 4

『笑ひ薬』Nipponophone 15689-A 1925(T14) 6月新譜 佐々紅華作詞・編曲による流行小唄。のちに二村自身がビクターで再録音して大ヒットした。近代的なナンセンスソングの嚆矢といえる歌である。 原曲はミンストレル歌手のBilly Goldenが1890年代から1920年…

二村定一のレコード 3

『牛若弁慶』 Nipponophone 15664 1925(T14) 5月新譜 浅草オペラの少女スターであった相良愛子との共演である。相良は達者な台詞回しと、女優連でもひときわ目立つ愛嬌のある声が特徴である。歌の上手さよりその活き活きした愛くるしい声がお伽歌劇のレコー…

二村定一年譜補完計画

◯昭和4年の項に以下の情報を追加。 6月2日 「ジャズの夕」長野県上諏訪本町銀座 フキザワ時計店蓄音器部主催 二村定一、曽我直子、春野芳子(舞踏)、井田一郎(指揮) 日本ビクタージャズバンド 昭和3年・4年は帝国館、電気館、観音劇場、と浅草の映画館・劇場…

二村定一のレコード 1

昨年、大阪から東京へ転居しました。東京での仕事も軌道に乗ってようやく身辺が東京という地に馴染んできたのですが、大阪を引き払うときにプロバイダを変更したため、2000年代半ばから長らく使ってきたホームページが消滅してしまいました。 思えばまだ昭和…

二村定一年譜補完計画

昭和3(1928)年の補遺事項 ◯昭和3年の項(p.242)に以下の情報が加わる。 2月5日 独唱会 (詳細は未詳) 6月24日 「映画と独唱の夕べ」丸の内・時事新報社講堂 主催:静田錦波講演会 この会では『当世娘気質』(西村小楽天)、『蝙蝠草紙』(大和田錦光・小田錦城)、…

GW二村定一特集②

二村定一集中特集② 二村定一にはいろいろな顔がありました。 浅草オペラで培った表現力が昭和のレヴュー時代、軽演劇時代になって役立ったのです。 昭和7年7月、浅草松竹座の「リオリタ」ではピストルをかまえるダンディーな伊達男を演じました。カウボーイ…

GW二村定一特集

イベント前なので二村定一を集中特集 良いお日和にめぐまれたGW、いかがお過ごしでしょうか。 一週間後の8日(日)の『浅草オペラ100年と二村定一リスペクト・ショー』(江戸東京博物館)まで、能うかぎり更新をして告知につとめたいと思います。 二村定一の一種…

ぐらもくらぶイベント間近!

5月8日(火)の江戸東京博物館・春のぐらもくらぶ祭り2016『浅草オペラ100年と二村定一リスペクト・ショー』まで、あと一週間となりました。 10年ちょっと前は二村定一といっても話の通じないことが多い、マイナー中のマイナーな存在でした。二村定一を取り扱…

ブログ開設のご挨拶と『春のぐらもくらぶ祭り2016』告知!

ブログ開設のご挨拶 以前使っていたteacupブログが新規更新を停止しているので、はてなに新たにブログを開設しました。どうぞよしなにお願い申し上げます。 『春のぐらもくらぶ祭り2016』 開設一発目から告知です! いよいよ世間はGWに突入しましたが、私ど…

二村定一の「新調ステテコ」

「新調ステテコ」(木下潤作詞, 近藤十九二作曲) 二村定一, タイヘイダンスオーケストラ 1934年11月新譜 二村定一は昭和初期、ジャズソングの覇者として認識されていたが、発声法や歌唱の微妙なゆらぎには端唄・小唄、俚謡の影響がみられた。邦楽的な要素の…

二村定一の流行歌二題

「当世男気質」 野村俊夫作詩、奥山貞吉作曲・編曲 丸山和歌子、コロムビア・オーケストラ 1933年3月新譜 二村定一のコロムビアにおける最後期の録音である。ナンセンス小唄と銘打たれている。丸山和歌子との共唱だが、丸山は各リフレインの最後のフレーズを…

二村定一の「枯れ枯れ」

「枯れ枯れ」(佐々紅華 作) 1926年11月新譜 伴奏は、フルート、クラリネット、トランペット、トロンボーン、ピアノ、ストリングス、という編成のニッポノホン・オーケストラ。 「枯れ枯れ」は中山晋平の「枯れすすき」や、「咲いた花なら」(江口夜詩=作曲 ニ…

湯山光三郎と東京ユーナイテッド・ジャズバンド

コメントで質問を頂いたので、その返答も兼ねて纏めてみたい。 「テルミー」”Tell Me” 堀内敬三訳詞、Max Kortlander作曲 1928年4月11日録音、1929年1月新譜 マックス・コートランダーが1919年に発表したノヴェルティーソング(滑稽味のある流行歌)で、Jose…

「おしゃらか節」(浪花名所小唄)

「おしゃらか節」(浪花名所小唄) 畑中真澄作詞、永井巴作曲 日東管絃団 1932年7月発売。 二村定一のレパートリーのひとつに「大阪をテーマとした歌」がある。大ヒットした「浪花小唄」(29年7月新譜)、コロムビアに移籍して正式な第一回発売となった「大阪セ…

二村定一「ヅボン二つ」「人間廃業」

ひさしぶりに二村定一のジャズソングについて記したい。 と言いたいところだが、今回も二村定一のジャズソングについて…と言った方がよいだろう。 「ヅボン二つ」"(You Can Only Wear)One Pair of Pants at a Time" ジェームズ・B・モナコ James B.Monaco作…

二村定一と青木晴子のSingin’ in the Rain"

“Singin’ in the Rain”というナンバーをずっと、といっても高校生までだが、戦後の産物だと思っていた。もちろんその根拠はジーン・ケリーの名シーンで有名な同名のミュージカル映画「雨に唄えば」だが、ラジオで二村定一の「雨の中に歌ふ」を知って、ああ、…

二村定一26歳の「スエズ」

毎月恒例の関西発NHKラジオ深夜便「SP盤コーナー」(第二金曜 a.m.2:05〜)、今夜は二村定一26歳の歌声による「スエズ "Suez"」です。放送に先立ち、このディスクについて少し解説を加えます。 「スエズ」(妹尾幸陽訳詞、Ferde Grofe & Peter de Rose作曲) …

二村定一の「ドリゴのセレナーデ」

「ドリゴのセレナーデ」"Notturno d'Amor"(堀内敬三訳詞、Riccardo Eugenio Drigo作曲) 二村定一 ニッポノホン 1926年2月新譜 リチャード・ドリゴ(1846-1930)の「百万長者の道化師」"Les Millions d'Arlequin"(1900)という歌劇の挿入曲。原題は「愛の夜想…

恋人よかへりませ

「恋人よかへりませ」”Lover, Come Back to Me” 二村定一, 太陽ジャズバンド 太陽レコード 1932年4月新譜 「恋人よ我に帰れ」という邦題でよく知られているスタンダードナンバーを二村定一が歌っている。「恋人よかへりませ」というタイトルも、雰囲気があっ…

「椰子の葉蔭に」「毎晩見る夢」

久しぶりに探求盤が手元へ来た。 二村定一は1928年から31年にかけて、ビクターへ69面のレコードを録音しているが、その末期のレコードはなかなか手に入りがたい。ビクターへの録音の最後の二つはまだ手に入らないでいる。だからといって珍品と見なされるとは…

百萬圓

二村定一ファンの間でなかば神格化されているコミックソングである。 アコーディオン、ギター、カスタネット、ヴァイオリンという簡素な伴奏を舞台として、ナンセンスな歌詞、宴のあとの空虚さを思わせるような曲、過不足ない表現の歌唱、と三位一体そろった…

二村定一の「暁の唄」

「暁の唄」 中里富次郎訳詩、Milton Ager作曲、井田一郎編曲。二村定一,コロムビアオーケストラ。1931年2月新譜 二村定一は1928年より1929年にかけてニッポノホンに、時を同じくして1928年より1930年にかけて日本ビクターでレコードを吹き込んだ。特にビクタ…