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ニッポン・スヰングタイム

著作やCD制作、イベントの活動を告知します。戦前・戦中ジャズをメインとして、日本の洋楽史について綴ります。

ぐらもくらぶ新譜のお知らせ

盛会御礼

今月8日のぐらもくらぶ祭「浅草オペラ100年と二村定一リスペクト・ショー」は、ぐらもくらぶ史上最大の盛会となりました。浅草オペラや二村定一に対する世間の興味が潜在的に大きいものであったことに心地よい驚きをおぼえています。

そうして特筆すべきは、『あゝ浅草オペラ: 写真でたどる魅惑の「インチキ」歌劇 (ぐらもくらぶシリーズ)』(えにし書房)を上梓した小針侑起氏を、新進の有望な研究者として紹介できたことです。

この著作は、写真や書簡、文献、レコードなど彼が蒐集した浅草オペラの資料から出来上がっています。「最後のペラゴロ」の視点から「浅草オペラとは何だったのか」という命題に取り組んでおり、浅草オペラの入門書としても資料文献としても読み応えのある好著に仕上がっています。歌手名鑑も、手際よく纏められているだけでなく写真やレコードラベルが併載されている点、丁寧で真摯な研究態度が伺われます。浅草オペラに関連する事物のコレクターは数あれど、その全体像をここまで把握し、混沌とした史実を明確に著し得る人は他にいないでしょう。

彼の著述に注目してゆきたいと思います。

 

ぐらもくらぶ新譜

さて、今月はぐらもくらぶ新譜ラッシュでした。すでにご紹介した『帰ってきた街のSOS! 二村定一コレクション1926-1934』『浅草オペラからお伽歌劇まで ~和製オペレッタの黎明~』につづいて、5月29日(日)にはさらなる新譜『大名古屋クラシック』がリリースされます。これは、ぐらもくらぶ初のクラシック音楽の復刻アルバムです。

名古屋の地元レーベル、アサヒ蓄音器商会(ツルレコード)は芸どころ名古屋の芸能だけでなく、東京と関西をむすぶ中間という地の利を活かして、東西のアーティストを起用したジャズソングや流行歌などを制作していました。

そんなツルレコードの遺産に、地元名古屋で活躍した音楽家たちによるクラシック音楽の録音があります。名古屋には名古屋楽壇があり、数多くのすぐれた音楽家を輩出していました。なかでも松坂屋百貨店が組織した松坂屋少年音楽隊から発展した「名古屋交響楽団(=松坂屋管絃楽団)」は、1930年代なかばに東京進出して中央交響楽団→東京交響楽団となり、現在でも東京フィルハーモニー交響楽団として歴史を刻んでいます。その、都市と音楽の関係に注目したのが「大名古屋クラシック」です。

このCDには、中央交響楽団が東京進出する直前に名古屋で残したレコーディングを核として、作曲家・高木東六(pf)と鈴木三兄弟によるピアノ四重奏、戦前から戦後に日本屈指のフルーティストであった河村秀一、瀧廉太郎の後輩で明治期の奏風を昭和に伝える小林禮、メンバーは未詳ながら名古屋が生んだ鈴木弦楽四重奏団に比肩するレパートリーを残したルモンド四重奏団、と盛り沢山の内容で戦前名古屋のクラシック事情を蘇らせました。

東京や大阪とはまた異なる名古屋音楽界を特集したCDは前例がありません。CDにはアサヒ蓄音器商会で録音されたクラシック音楽ディスコグラフィーも付録として付けました。音源資料として・文献資料としてというのは勿論ですが、まずは洋楽黎明期に努力を重ねた先達の音楽性豊かな演奏をお楽しみください。

 

 

二村定一と浅草オペラのCD、売れ行き好調です。お早めにお購めください!