読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ニッポン・スヰングタイム

著作やCD制作、イベントの活動を告知します。戦前・戦中ジャズをメインとして、日本の洋楽史について綴ります。

GW二村定一特集④

GW二村定一集中特集

さすがにGW疲れしてきました。

来たる8日(日)の春のぐらもくらぶ祭り2016『浅草オペラ100年と二村定一リスペクシ・ショー』では、さまざまな角度から二村定一を生んだ浅草オペラと、二村定一というエンターテイナーを解剖しようと企てております。

二村定一について語るとき、まず最初に触れられるのは「二村定一はレコード歌手である」ということでしょう。「アラビアの唄」や「洒落男」などをヒットさせたことから"日本のジャズシンガー第一号"と呼ばれることもありますし、「君恋し」や「神田小唄」など和製のジャズソングもヒットさせたことから、その大きな鼻に引っかけて"流行歌の鼻祖"と呼ばれることもあります。

二村定一がレコードに吹き込み始めるのは大正12年(1923)、23歳の時からです。大正期にはお伽歌劇を中心に、佐々紅華作のコミックソングや翻案のコミックソング、外国のポピュラーソングを吹き込みます。ポピュラーソングのレパートリーは「スエズ」「テルミー」「スパニッシュセレナーデ」「イエス、ウィーハブノー・バナナ」「ヴァンプ」などで、これらはさほどヒットはしませんでしたが、昭和初期のジャズソングブームを先取りしています。ジャズソングがブームとなるには、いま少しのジャズ文化の成熟とレコード業界の変革が必要でした。

f:id:jazzrou:20160505235002j:plain

(二村定一が最初に加わった録音「地獄祭り」。大正12年12月新譜。二村のネームが入った初レコードは2年後の大正14年から作られる。)

 

昭和3年、二村定一はニッポノホンに「アラビヤの唄」「あほ空」「雨」などを録音します。次いでニットーでも「浅草行進曲」「アルゼンチンの踊」「第七天国」「リオリータ」などを録音。その年のうちに日本ビクターと契約して、井田一郎のジャズバンドとともに夥しい録音を行ないます。これら一連のレコードが導火線となって二村定一人気は全国的なものとなりました。

昭和5年、二村はビクターに在籍したままポリドールへも録音します。ポリドールでは「スパニッシュセレナード」「恋人」「ラブ双紙」などのジャズソングのほか、映画主題歌などを多く録音しています。その年の秋にはビクターからコロムビアに移籍し、もっぱら流行歌と映画主題歌を録音しました。ジャズソングにも「スタインソング」「暁の唄」「ヅボン二つ」「人間廃業」「エロ草紙」など良い歌唱があり、これらのレコードはよく売れました。昭和6年にはオデオンに2曲、パーロホンに7曲を残しています。

昭和6年からは関西のタイヘイ、ニットーにも主としてダンス小唄やコミックソングを録音し、東京のマイナーレーベル・オーゴンでもコンビを組んでいたエノケンとの掛合「歌道楽」や流行歌を手がけました。また昭和7年4月に一枚一円という廉価を売り文句とした新興レーベル・太陽も二村定一人気をあてにした会社で、前年から録りためた二村レコードが都市部を中心によく売れました。このレーベルには「恋人よかへりませ」「ハングオンツーミー」「君よさらば」というジャズソングの傑作盤があり、「銀ブラソング」はサイプレスを繰り返したヒット作。「街のS.O.S.」や「インチキ小唄」「娘アラモード」などのコミックソング二村定一のコミカルな個性を活かしており、他社にない特色を持っていました。

この昭和6、7年あたりは二村定一がレコードでもリアルでも売れっ子の頂点だった時期でしょう。浅草の舞台でエノケンと共演して、レヴューに欠かせない存在にもなっていました。榎本健一と二人座長をつとめる「ピエル・ブリヤント」を立ち上げてからは多忙のためレコード録音も少なくなりますが、昭和8年からキングとタイヘイに散発的に流行歌・コミックソングを録音し、昭和11年には榎本健一と組んで舞台で大当たりした「民謡六大学」をテイチクで録音しました。彼のレコード歴は昭和12年で終わり、その後は舞台とエノケン映画での活躍にシフトしてしまいます。

f:id:jazzrou:20160505234553j:plain

 

以上ざっと二村定一のレコード経歴を書き出してみました。今日では比較的多くのCDで、以上に述べた各レーベルの二村定一録音が楽しめます。

ビクターへの録音は、ジャズソングを中心として「私の青空~二村定一ジャズ・ソングス」にまとめられていますし、コロムビア録音からも「ヅボン二つ」「百萬円」などが「ニッポン・モダンタイムス シリーズ~SWING TIME~」に収録されています。ポリドールのジャズソングも「幻のSP盤復刻!~ニッポン・モダンタイムス・シリーズ~スウィング・パラダイス」で4曲が聴けます。また榎本健一とのコンビ芸を伝える「民謡六大学」が「唄うエノケン大全集~蘇る戦前録音編~」 に収録されています。

ぐらもくらぶは創設第一作から二村定一推しで復刻をしています。今回、『浅草オペラ100年と二村定一リスペクト・ショー』でフライング発売する2タイトルでは、浅草オペラのお伽歌劇やオペレッタで大活躍する二村定一から、比較的後期に属するタイヘイ録音まで贅沢に二村のマストテイクを集めました。自信を持ってお薦めできるCDです。

このほか、ぐらもくらぶの企画ものアンソロジーに積極的に二村定一を散りばめたため、監修者の自分にもそろそろ把握が困難になってきています。以下のCDには、ほかのCDと重複しない音源が収められています。アンソロジーの企画自体、私どもの自信作ですが、こうして並べてみると二村定一という人が如何に多種多彩な企画に即応して強烈なキャラを発していたんだなあ、と驚きを新たにします。

それにしてもよくまあこれだけのCDに散りばめたものですが、8日(日)はこれまでぐらもくらぶが注いだ二村定一愛が炸裂する一日となります。間違いなく。私はしゃべくるだけですが、佐藤利明氏、大谷能生氏、小針侑起氏(当日、初の著作『あゝ浅草オペラ: 写真でたどる魅惑の「インチキ」歌劇』 の販売・サイン会があります)、青木研氏、渡邊恭一氏と彼のSwingers、「泊」の山田参助氏と武村篤彦氏、と多士済々がそれぞれの分野で二村定一に迫ります! プロデュースはぐらもくらぶ主幹の保利透氏。二村定一イベントの立案者で、今回は第一部にだけ出演ということですが二村愛にかけては制作CDが証明しています。

今回はぴあでチケット前売りをしています。二村定一が知りたい!という方は長い連休のしめくくりにぜひお越しください!!

 

『浅草オペラ100年と二村定一リスペクト・ショー』

場所:両国・江戸東京博物館ホール(JR・大江戸線両国駅下車・東京都墨田区横網1-4-1
開催日:5月8日(日曜日)
開場:14時00分
開演:14時30分
入場料:前売り2.000円、当日2.500円

★前売り券はチケット・ぴあにて好評発売中!!!
Pコード:292760・興行コード:1611812
http://ticket.pia.jp/pia/event.ds?eventCd=1611812

主催:ぐらもくらぶ/協賛:活動写真実演会・メタカンパニー・えにし書房
<お問い合わせ>
メール:gramoclub78@gmail.com
電話:03-5273-2821(メタカンパニー内)
オフィシャルサイト:http://d.hatena.ne.jp/polyfar/