さきに『春のぐらもくらぶ祭り2016』をお知らせしましたが、5月にはぐらもくらぶより3種の新譜CDがリリースされます。
1つめは「二村定一リスペクト・ショー」との連動企画である「帰ってきた街のSOS! 二村定一コレクション1926-1934」です。
ぐらもくらぶの第一作「街のSOS!」(2012 品切れ)は、従来なかった二村定一のマイナーレーベル録音集として好評裡に迎えられましたが、同アルバムを2枚組で新規構成したのが今回発売の新作です。一枚目にはニットー、ビクター、ポリドール、太陽、オーゴン、タイヘイに吹き込んだ流行歌を、二枚目にはジャズソングを集めました。ビクターエンターテインメントの「私の青空~二村定一ジャズ・ソングス」と併せると、これでビクターの舶来ジャズソングはコンプリート復刻となります!
思えば二村定一の音源に飢えてSP盤を集め始めた中学時代、「いつかは自分の手でジャズソングの復刻をしたい」という熱望を抱いていました。現在の自分にとっても至福のアルバム内容です。
2つめは「浅草オペラからお伽歌劇まで ~和製オペレッタの黎明~」です。
大正期、関東大震災まで全盛を極めた浅草オペラの歴史をたどりながら、日本ならではのオペレッタの一様式「お伽歌劇」にフォーカスを当てたCDです。お伽歌劇というと子供向けという印象を字面から受け取りがちですが、また実際、子供向けという一面もあるのですが、浅草オペラで提供されたお伽歌劇の多くは大人でも楽しめる新しいタイプのエンターテインメントでした。お伽歌劇には、
1) 日常的なできごと(ex.茶目子の一日、毬ちゃんの絵本)、
2) 無機物の擬人化(ex.ドンタクラヂオ、武者会議)、
3) 非現実的な人物(ex.浅草遊覧、ボンボン大将)、
4) SF的設定(ex.天保から大正まで)
という諸要素が盛り込まれた荒唐無稽な面白さと、現実社会に対する刺すような毒(ex.ちょいとお待ち、浅草遊覧など)がありました。ただ単に面白いというだけでない広がりが、お伽歌劇にはあるのです。
本CDでは浅草オペラの前史からオペラ全盛期の当たり狂言という歴史も辿る構成となっています。ライナーには若き浅草オペラ研究科家・小針侑起氏の言葉を頂いています。その小針氏の処女作あゝ浅草オペラ: 写真でたどる魅惑の「インチキ」歌劇は、彼が情熱を傾けた浅草オペラの研究成果と貴重な写真群(遺族由来の生写真が多数含まれると仄聞している)で浅草オペラ研究に新しい地平を拓きます。
これら2種のCDと書物は5月25日発売予定ですが、来る8日(日)の江戸東京博物館での「春のぐらもくらぶ祭り2016」でフライング発売されます。
2016-04-12 - SPレコード・蓄音機で聞く78回転SP盤の昭和歌謡・流行歌の話題 〜レコード狂の詩〜
さて3つめは、中部地方唯一のレコード会社であったアサヒ蓄音器商会(ツルレコード)が手がけたクラシック音楽のアンソロジー「大名古屋クラシック」 です。
これは先行するアルバムの第三弾です。思えば中学・高校時代、名古屋のツルレコードに興味を抱いてレコードや資料を集め、「いつかツルレコードの復刻を作りたい」と夢見ていたことが現在につながっているのです。
アサヒ蓄は大正期からクラシック音楽にも並々ならぬ力を注ぎ、同社のカタログに重要な一角を占めていました。特に昭和期には名古屋在住の音楽家をスタジオに招いて、メジャーレーベルに勝るとも劣らない企画力で数多くのレコードを制作しました。本CDはそうした名古屋の「眠れる宝」をアンソロジーしています。名古屋から雄飛した鈴木兄弟と作曲家として知られる高木東六の稀少な室内楽、戦前戦後と日本の代表的なフルーティストであった河村秀一のソロ録音、瀧廉太郎と知己であった明治洋楽黎明期のピアニスト・小林禮の弾くベートーヴェン、戦前には珍しい弦楽四重奏の録音群、そして松坂屋少年音楽隊から発展した戦前名古屋のシンフォニー・オーケストラ「中央交響楽団」(現在の東京フィルハーモニー管弦楽団)の録音。ここには戦前名古屋の洋楽が詰まっています。
こちらは5月29日に発売予定です。
以上3点の新作ぐらもくらぶアルバム、いずれも自信作です。ご期待くださいませ!